愉しい自転車&生活

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Category: [アフリカ]エチオピア

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Community: テーマ-自転車旅行  ジャンル-旅行

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インジェラとわたし


今回はインジェラを無駄に語る回です。


エチオピア人の主食インジェラ。

まず簡単に説明しておくと、インジェラというのはテフという穀物を原料にし、薄く焼いたクレープ状の食べ物のことである。テフって何だよと思った人。グーグルに聞いてほしい。私は知らない。インジェラとしてしかテフと出会っていないので。正確には恐らく走行中に見ているはずだが、それと認識していないので見てないのと同じである。
それで、このインジェラという食べ物は製作段階で発酵させるので独特の酸味をもっている。誰が最初に言ったか知らないが、旅行者の間では、もっぱら見た目は雑巾で味はゲロだという評判の食べ物である。先に言っておくと、見た目は雑巾に見えないし、味もゲロではないので、エチオピアに訪れた人は恐れずに沢山食べてほしい。一応、エチオピア人の代わりに怒っておく。インジェラ断じてゲロではないし、雑巾でもない(怒) では、先に進みたいと思います。

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私のインジェラとのファーストコンタクトは、忘れもしない。エチオピア初日の夜だった。一日を走りきり、「空腹」という最高のコンディションでホテル近くのレストランに入った。誰がスタッフなのか全く分からなかったが、それっぽい人に「何か食べたい」と言うと羊の肉があると言うので、羊肉を注文した。

こんな手元もよく見えないほど暗いところで飯を食うのか、などと思い蚊に刺されながら待っていると、出てきたのは巨大な皿からはみ出すほどデカいインジェラとその上にちょこんとのった肉だった。「インジェラ」じゃなくて「シープミート」と注文したから肉とパンの組み合わせとかで出てくるのかと思ったのだが、違った。ここはあのエチオピアなのだ。インジェラはもはや前提であり、その上にのせる具を何にするかという話だったらしい。

すれ違いだった注文をとった彼と私の想い。そしてついに対面した巨大なインジェラに胸を高鳴らせながら、とりあえずインジェラだけで食べてみる。口に入れた瞬間に理解した。出会いたくなかったようで、出会いたかったもの、これがインジェラの「酸っぱさ」かと。レモンのような鋭さと切れ味はないが、舌全体に広がるような感じである。あとからくるのではなくて、入れてすぐに酸っぱいと分かる程度には酸っぱい。しかし、焦ってはいけない。これは具を巻いて食べるものだ。次は肉と食べてみよう。

エチオピアでついに出会った羊とインジェラ。これは奇跡の邂逅か、はたまた一方的な蹂躙となるのか。結末はいかに。とりあえず、雑巾、じゃなかった、インジェラで羊を包み込み食べてみる。こ、これは・・・インジェラの主張が強すぎる。羊にはもう少し頑張って欲しい所である。でも、このくらいなら全然いける。そう最初は思っていた。

しかし、食べすすめればすすめるほどに、酸味だけが、唯一人酸味だけが、口の中に取り残されていく。一緒にいた羊はと言えば、定時前には帰り支度を始め、定時きっかりでさっさと帰ってしまうのである。いや、それは良いことなのだが、酸味だけがダラダラと定時過ぎても居残るのである。待て待て待て、お前もさっさと帰れ。お前の仕事はもう終わっているんだ。 

しかし、そんな思いむなしく、インジェラの酸味が、いよいよその支配力を発揮し始める。巨大なインジェラを半分も食べるころには、もう私の口の中はインジェラの酸に犯されていた。舌が痺れてるような感覚すらある。もはや羊など居ても居なくても変わらないくらいだが、でも絶対に居てくれないと困る。酸の海に溺れる私にとっての藁であり、たった一つの光。それは羊。ここで私は「水」を大量に投入するのだが、水でも無理だったのである。水に流すことすらかなわない。万策尽きる。最終段階に入ると、口の中でも発酵を始めたのではないかと思えるほどだった。そのせいで、咀嚼ペースは著しく低下。それがさらに酸味のオーバーステイを許してしまう。まさに負のスパイラル。

こうして、インジェラという酸の螺旋から抜け出せぬまま、私とインジェラの最初の夜が終わった。もっとも安易な言葉で終わらせるのであれば「不味い」。これが感想だった。その不味いを言うために、こんなに長い文を書いたのだ。しかし、早まらないでいただきたい。これはあくまで初日の感想に過ぎないのである。


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ところで、世の中には「ブスは三日で慣れる」という言葉があるらしい。それが真実か、はたまた美人と一緒になれなかった人間の負け惜しみかは知らない。ただ、インジェラと私に関して言えば確かに3日で十分だった。エチオピアの田舎ではインジェラしか置いてないことが多い。だから、私は初戦の傷も癒えぬまま毎日インジェラを食べた。腹が減っては走れないし、幸い全く食べられないほど駄目ではなかったから。朝も、昼も、夜も、インジェラと共にすごした。するとどうだろう。3日目の時点で自身の変化に気づく。抵抗なく食べられるようになっていたのだ。私はインジェラを理解し始めた。



ご飯やパンは噛むと「甘味」が感じられる。ただでさえ、甘い味付けが好きな日本人だ。主食が酸っぱいというのはかなりの抵抗がある。しかし、私は「日本バンザイ!」と思っている人間ではない。日本人旅行者が大好きな「日本食美味いよね話」も、私には全く理解できない。現地で食う現地飯こそ至上と思っている。祖国の料理への郷愁は一切ないし、かといってフレンチやらイタリアンやら海外料理への憧憬もない。美味けりゃ何でもいいだろと思っている。つまり、特定料理への偏向が少ない私の舌が、インジェラの酸味を理解し受け入れ始めたのだ。



心を開いて食べていけば、あの酸味が癖になってくる。むしろあのインジェラの酸味があるからこそ、具材の味が引き立つのである。一見、インジェラが一方的に主張しているように見えて、その酸味の奥からしっかりと具材の叫びが聞こえるのである。それを理解できれば、インジェラは決して味の破壊者というわけではなく、具材を激しく包み込む頼もしい存在であることが分かるだろう。そこそこのレストランだとインジェラとパンを選択できたりするのだが、私はパンを選んだことはない。パンの甘味はインジェラの具に合わないからだ。あんな甘ったるいものが相手では、具たちがパンの甘さに甘ったれてサボるのである。インジェラの具はインジェラで食べるからこそ美味いのだ。


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こうしてついにインジェラを美味いと判定した私は、むしろ三食すべてインジェラでいいくらいになった。走行後の腹の減り具合では2回夕食を食べることもあるのだが、2連続インジェラを食べることもあった。ちなみにエチオピア人に「インジェラ美味しいよね」と言うと、エチオピア人自身、インジェラの特殊性を理解しているからなのか、ほぼ例外なく喜ばれる。そんなに嬉しいか?とこっちは少し不思議に思うくらいだ。しかし、私としてもインジェラと懇意になれて嬉しい限りである。


長々と書いてしまったが、最後に軽く種類を紹介して終わりたいと思う。
私が好んで食べたのは「バイヤナット」と「ティブス」である。

これがバイヤナット。見た目もカラフルで楽しい。
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エチオピアは断食日があるらしいのだが、ただそれは「肉を断つ日」という意味らしく、その日に食べるのが野菜と豆を具材にしたバイヤナットということらしい。もちろん私にはそんなもの関係ないが。


それとティブス。見た通り肉である。
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肉がカタかったりすると食べるのが大変だが、これもよく食べていた。ただ、肉が十分な量の所もあるが、インジェラに対して少ないこともあるので、初心者はまずバイヤナットあたりで慣らすのが良いと思われる。


そして、インジェラをインジェラで食べる、究極のインジェラ。フルフル。
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ひたひたに味の浸みたインジェラをおかずに食うインジェラ。私はアディスアベバに到着した日、他に沢山選択肢があるにもかかわらず、頼んだのはフルフルであった。好きな人は是非食べてほしい一品である。


あとはシロとか、クットフォとかあるが、これらは一回食べたきりだった。シロは言ってみればインジェラに「汁」をかけるだけなので運動する人間にとっては物足りな過ぎる。できればユルイものじゃなくて、しっかり固形のものを食べたい。クットフォは生肉なので、食あたりが怖い。というか、一回食べたらおなか痛くなった。それに大して美味いと思わなかったし。それ以外にもスパゲティ・オンザ・インジェラもあったりとか、種類は山ほどあって私が知っているのは、本当にほんの一握りに過ぎない。気に入ったものがあると割とそればかり食べてしまうので、あまり開拓はしなかったんである。チャレンジ精神のある人はもっと色々チャレンジすればインジェラの奥深さをより味わえることでしょう。


以上、インジェラとの出会いでした。


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comments
 
以前、インジェラについて調べていた時に、クックパッドにインジェラの作り方を投稿している人を見つけてびっくりしました。材料のところにはやはり「テフ」とあったんですが、そのテフはどうやって手に入れるのかが謎です。

ところで僕は今日飛行機でナイロビまで戻り、また南アを目指して走行する予定です。染谷さんは現在どのあたりにおられるのでしょうか?もし近ければ一度お会いしたいなと思ったんですが。
Re: タイトルなし 
確かに。テフが無ければ作り方が分かっても意味ないですよね。でも日本でインジェラ出すお店もあるみたいなので、何処かしらに入手ルートがあるんでしょうか。

ところでの方ですが、むちゃくちゃ近い場所にいます。
いま、ナイロビの40㎞ほど北にあるThikaという街でパソコン修理のため少し留まっていました。修理も終わって明日(8日)出るのでこのままナイロビでお会いしましょうと言いたい所なんですが、都会嫌なのでナイロビはよけてこうと思ってます。迂回してAthi Riverまで行って、そこからナマンガの国境でタンザニアへという感じです。崎山さんも同じルートでタンザニアインですか?
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プロフィール

染谷 裕太

Author:染谷 裕太
2012年6月カナダからスタートした自転車世界旅行をきっかけに始めたブログです。当初は単純な旅日記でしたが、現在は旅だけではなく日常も含めた様々な場面で自転車を楽しみ、その面白さを発見し、発信していきたいと思い書いています。

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